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大洪水から人類を護る

シュメールの神話によると、エンキは人類が滅ぼされるべく定められた大洪水を生き延びるよう、助けを与えた。 アトラハシス(またはジウスドラ、ウトナピシュティム)の伝説によれば、神々の王エンリルは、地上に繁殖した人類の騒擾が耳に障ったため、彼らを滅ぼそうと企てた。 そこでエンリルは人類に対し、一度目には旱魃を、二度目には飢饉を、三度目には疫病をもたらした。しかし、エンキは、人間のアトラハシスに、灌漑農業・麦の栽培・医学の知識をもたらし、腹違いの兄弟であるエンリルの計画の実現を三度とも阻止する。 こうして、人類は四たび地上に繁殖した。 これに怒ったエンリルは、神々の会議を召集した。エンリルは今度は、人類を絶滅させる計画を人類にもらさないよう、神々に約束させた。 エンキは、アトラハシスという人間の住んでいる葦の小屋の壁を通して、彼ら人類に迫る危機を聞かせた。そして、彼にこっそりと、アトラハシスと彼の家族の乗るための舟の作り方を教えた。 そして大洪水が訪れ、7日7晩続いた。洪水が引いた後、アトラハシスは、ツバメ・鴉・鳩を放して、洪水の水が引いたかどうかを確かめた。 そして、水が引いて船底が地につくと、神々に犠牲が捧げられた。 一方、エンリルは、彼の計画が再び阻止されたことに怒り、エンキに容疑が着せられ、人類への罰が検討された。 それに対しエンキは、エンリルが罪のないアトラハシスを罰するのは公平ではないと神々に弁明し、もしも人類が出生を適度に抑え、自然界のおきてを守るなら、神々も人類を滅ぼさないとの約束をとりつけた。 ただし、もし人類がこの契約を尊重しないならば、神々が再び大破壊を引き起こすことは自由であると、念押しがされた。 以上の話は、現存する最古の中東の大洪水伝説であることは明らかである。

エンキとイナンナ [編集]
エンキは、女神イナンナとの関係においては、非家父長制的な側面を見せている。 ウルクのエアンナ寺院の若い女神イナンナにまつわる神話「エンキとイナンナ」によれば、あるとき、年老いたエリドゥの神エンキが訪れ、饗宴のもてなしを受けた。 その宴においてエンキは、イナンナにビールをすすめて誘惑しようとしたが、彼女は純潔を守った。反対に、エンキは酔っ払ってしまった。 そして、彼は彼女に気前よく、文明生活の恵み「メ」をすべて与えてしまった。次の朝、二日酔い気分で、彼は召使のイシムードにメのありかをたずねたが、そのときはじめて彼はメを失ったことを知った。 彼は取り乱し、メを取り戻すためにガラの悪魔を差し向けたが、イナンナはその追跡から逃がれ、ウルクの川岸に無事たどりついた。 エンキはだまされたことを悟り、最終的に、ウルクとの永遠の講和を受け入れた。 この神話は、太初において、政治的権威がエンキの都市エリドゥからイナンナの都市ウルクに移行するという事件を示唆していると考えられる。

「イナンナの子孫」という神話においては、次のような物語がある。あるとき、イアンナは、妹である女神エレシュキガル(Ereshkigal)のもとを訪れた。エレシュキガルは、夫グガランナ(Gugalana:Guは「雄牛」、Galは「偉大な」、Anaは「天」の意)を、人間の英雄ギルガメシュとエンキドゥに殺されて喪に服しており、イアンナは彼女を慰問したのであった。 金星を司る女神イアンナは出発に際し、宵の明星として彼女の代役をつとめることもある、しもべのニンシュブール(Ninshubur:Ninは「女性」、Shuburは「夕べ」の意)に対し、もし自分が3日のうちに帰還しなければ、イアンナの父神アヌ、神々の王エンリル、ないしはエンキに助けを求めるよう命じておいた。 果たしてイアンナは3日のうちに戻らなかったので、ニンシュブールは、まずアヌに助けを求めたが、彼はイアンナは力の強い女神であるから大丈夫であると言うのみであった。 次にニンシュブールはエンリルに助けを求めたが、彼は宇宙を運営するので手一杯であるとして取りあわなかった。 最後にニンシュブールは、エンキに助けを求めた。エンキはイナンナを心配し、配下のガラの悪魔、すなわち、神の指の爪の下の汚物から作られた性別のない存在であるガラトゥッラ(Galaturra)とクルガッラ(Kurgarra)を放ち、女神イアンナを取り戻した。

この話に現れるガラの悪魔は、ギリシャ・ローマにおいては、女神キュベレーの信奉者である去勢された男性を指す「ガリ」(Galli)の語源となっていると考えられる。彼らは、宗教儀礼において重要な役割を果たしていた。また、アメリカインディアンの部族の中にも、一人の人格の中に男性と女性の両方が出現するバーダッシェ(berdache)と呼ばれる人々がいるが、同様に宗教・生活において重要な役割を果たしていた。

また、「イナンナとシュカレトゥーダ(Shukaletuda)」という物語では、次のような話がある。庭師のシュカレトゥーダはあるとき、エンキの命令でナツメヤシの木の手入れをしていたところ、木の下でイナンナが眠っているところに出くわし、そのままイナンナを犯してしまった。 イナンナは、目が覚めて自分が犯されたことがわかると、犯人を探して処罰しようとした。 シュカレトゥーダは、エンキに庇護を求めた(ちなみに、フランスのジャン・ボッテロ(Jean Bottero)は、エンキがシュカレトゥーダの父親であると考えている)。 エンキはシュカレトゥーダに、古典的なやり方ではあるが、イアンナに見つからないためには、町の中に隠れるのがよいと助言した。 エンキとしては、助けを求める者には誰にでも神として庇護を与えるべき体面と、イナンナについてはメの力を与えるまでの深い関係にあることとの間で、微妙な立場に置かれてしまった。エンキは、偉大なる審判者としての立場からであるとして、イナンナに対して、衝動的な怒りはおさえるようにと働きかけた。 ところが、ようやくイナンナの怒りがしずまったところで、今度は彼女もまたエンキに対し、アヌンナキおよびイギギの神々の集会において、今回の件での代弁者となってほしいと、助けを求めてきた。 イナンナが今回の件についてわけを話すと、彼は正義が行われる必要があると言って援助を約束し、とうとう彼女にシュカレトゥーダの居場所を教えてしまった。

エンキの描写 [編集]
エンキは生命と回復を司る神と考えられており、描かれる場合には、チグリス川とユーフラテス川を象徴する二つの水流が肩から発している姿をとることが多かった。彼のそばには自然の男性面と女性面を象徴する木がある。錬金術師のようないでたちをしたエンキはそれら両面を見事に混ぜ合わせ、いくつかの存在を創造し地表から生じさせる。

エンキの性格は道化師や奇術師のようではない。彼は馬鹿ではないし、だますこともだまされることもない。彼は男らしいリーダーであり、いつもそのように振舞っていた。彼は基本的には神々のトラブルの解決役であり、世界に対立や死をもたらすものを避けたり、あるいは武装解除したりすることもある。彼は慈悲の心とユーモアのセンスをもって、異母兄弟である神々の王エンリルの怒りを鎮める仲裁者でもあった。神話「エンキとイナンナとメ」においては、彼は愛と戦争を司る女神イナンナの限界を試し、しかる後に自ら敗北を認めて、エンキの都市エリドゥとイナンナの都市ウルクの絆を強めたりもした。

エンキはまた、地底の淡水の湖アプスー(ギリシャ語・英語ではabyss)の主であった。

「エンキ:淡水の主、すべての技術・魔術・知識のマスター」[2]というエッセイでは、エンキについて次のように述べている。

「(エンキは)メソポタミアおよび世界の宗教上最も完全で新しい男性像である。彼は時間を超越した価値・特性を有しており、メソポタミアで最も愛された神の一人といっても驚きではない。どうしてそれほど完全なのか。それは、彼の中で、情熱的で喜びに満ちた恋人・神秘家・戦略家・魔術師・神々の支配者・世界の秩序の維持者・人類と神々の救済者がすべてひとつになっているからだ。

エンキは…高潔で衝動的でエネルギッシュな知識の主であり、真理の探究者であり、魔術・魅惑の熟達者である。」

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2009年04月12日 11:18に投稿されたエントリーのページです。

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